抵抗内蔵型トランジスター(BRT)のオン時に必要な電圧を得ることができる(オンしたときにコレクター・エミッター間の電圧降下を小さくしたい)

NPN BRTを使用した基本的なスイッチ回路を図-1に示します。
NPN BRTはオン時に飽和領域で使用することにより、外部抵抗RLとコレクター電流ICによりコレクターの電圧が降下しGNDレベルになります。ただし実際には、コレクターとGND (エミッター) 間にはVCE(sat)と言われる電圧があります。この電圧はベース電流IBを増加させることにより低減できます。
(図-1でオン時のC-E間電圧 (VCE(sat)) はVCE(sat) << VCCですので、IC = VCC / RL とほぼ固定値となります。従って、IBを増加させることは hFE (= IC / IB) を低下させることになります。このことはトランジスターがより深い飽和状態へ移行し、VCE(sat)が低下することを意味します。)

通常ベースには限られた電圧しか印加できないと思います。規定のベース電圧で多くのベース電流Ibを流す方法を検討します。

内部ベース電流Ibは下式になります。
   Ib = IB – IR2 = ( VI – Vbe ) / R1 – Vbe / R2

VIは入力電圧、Vbeは内部ベース・エミッター間電圧で約0.7Vと固定値で考えます。
(図-3に BRTで使用しているトランジスターとほぼ同等な汎用トランジスター 2SC2712のVBE(sat) – ICカーブを示します。これを見るとBRTを使用する範囲でVBEの偏移幅は数百mVです。これは入力の電圧レベルに対して無視できる値です)

Ibの式から、Ibを多く流せるBRTの条件としては、以下の2点になります
1)    R1が小さい
2)    R2が大きい 
抵抗比率(R1 / R2)の小さい製品と言うことではなくR1の値の小さな製品を選択する必要があります。これらの製品を選択することにより同一の入力電圧 VIでより多くのベース電流を流し込むことが可能になります。
ただし、これらの対応により消費電力が増加、飽和が深くなるのでスイッチングスピードが低下するなどの弊害があります。また、飽和電圧は図-4に示すように温度に対して正の依存性があります。
これらを考慮の上、最適な設計を行ってください。

図-1 BRT基本回路
図-1 BRT基本回路
図-2 出力特性曲線(2SC2712の例)
図-2 出力特性曲線(2SC2712の例)
図-3 2SC2712 VBE(sat) - IC
図-3 2SC2712 VBE(sat) - IC
図-4 VCE(sat) – IC 温度特性
図-4 VCE(sat) – IC 温度特性