ガラス管ヒューズやポリスイッチに対して、eFuse ICを使用するメリットは何ですか?

eFuse IC(電子ヒューズ)はガラス管ヒューズ(チップヒューズ)の利点である電流の遮断が可能で、ポリスイッチ(PTCサーミスター、ポリヒューズ、リセッタブルヒューズ)のように交換しないで再起動させることが可能です。ガラス管ヒューズやポリスイッチなどの過電流が引き起こす発熱(温度上昇)による遮断(または抑制)動作と異なり、eFuseICは電流(電圧)を直接モニターして判断するので、精度高く短時間での遮断が可能です。また、過熱保護や電圧クランプ、逆流防止など多種の保護機能を併せ持ちシステムの高信頼性化が実現できます。

図1 ガラス管ヒューズ
図1 ガラス管ヒューズ

主な特徴:
ガラス管ヒューズ、ポリスイッチ、eFuse ICはいずれも過電流対策に用いられます。特徴の違いは、過電流が流れたときの状態と交換の要否です。

過電流が流れたときの状態

  • 電流を遮断:ガラス管ヒューズは内部の金属配線が溶断して回路をオープン(開状態)にします。eFuse ICは内蔵のスイッチ(MOSFET)をオフにして電流を遮断します。
  • 電流を制限:ポリスイッチは温度が上昇しある温度以降になると直列抵抗値が指数関数的に大きくなります。抵抗が大きくなることで電流を減少させます。

交換の要否

  • 交換必要:ガラス管ヒューズは動作すると内部配線が溶断し戻りません。
  • 交換不要:ポリスイッチは素子の温度が低下すると、直列抵抗値が下がり元の状態に戻ります。eFuse ICは内蔵のスイッチをオンさせることで、簡単に元の状態に復帰することができます。

eFuse ICでは電流を遮断してから元の状態に戻る復帰の方法は、選択したICによって異なりますが2つあります。
①オートリトライタイプ:一定時間(約100 usec)後に復帰動作を行う。
②ラッチタイプ:外部からコントロール信号(EN/UVLO端子への信号)などで復帰させる。

オートリトライタイプとラッチタイプについては、一長一短があります。
PCやスマートフォンなどに接続するオーディオ機器・モニター・マウス・キーボードなどのプラグアンドプレー機器ではケーブルの破断や接続の状態、故障した機器の接続などが考えられます。この接続によって過電流が流れ上記の電流制御素子が働くことがあります。
(下記FAQも参照ください)
eFuse ICは、ホットスワップ(活線挿抜)の用途に使用できますか?

このような場合、故障を解除した後にポリスイッチのような交換不要なリセッタブル素子が必要です。ただし、ポリスイッチでは過電流ではないですが、抑制された電流が流れ続けます。また、過電流発生の要因が取り除かれないと 温度上昇 ←→ 温度低下 を繰り返すことになります。
信頼性が求められる機器や下流の安全性確保が重要な場合、電流を止め故障箇所を回復してから動作させることが重要です。このような用途には、ガラス管ヒューズが最適です。
eFuse ICはリセッタブル(オートリトライタイプ)、完全停止(コントロール信号で再起動するラッチタイプ)どちらの要求に対しても、ICを選択することで対応可能です。また過電流検出時にはガラス管ヒューズのように電流を遮断します。

ガラス管ヒューズ・ポリスイッチ・eFuse ICの動作原理:
ガラス管ヒューズはヒューズを通過する電流とヒューズの持つ抵抗によって発生するジュール熱によって、可容体であるヒューズエレメントの温度が融点を超え溶断することにより電流を遮断します。

図2 ポリスイッチ(ポリマーPTC)
図2 ポリスイッチ(ポリマーPTC)

ポリスイッチにはポリマーPTCとセラミックPTCがあります。過電流対策には主にポリマーPTCが用いられます。ポリマーPTCは絶縁ポリマーに導電性粒子(カーボンやニッケルなどの金属)を混在させ形成されてます。

常温では導電性粒子が接触し、低抵抗な素子となっています。過電流時にはサーミスターを通過する電流とサーミスターの持つ抵抗によって発生するジュール熱によって、サーミスターのポリマーが膨張し導電性素子が分離することによって高抵抗になります。抵抗値はキュリー温度(25 °Cの抵抗値に対し抵抗値が2倍となる温度)を超えると急激に増加します。

図3 eFuse IC
図3 eFuse IC

ガラス管ヒューズ・PCTサーミスターとも電流増加で発生するジュール熱による素子の温度上昇を利用しています。このため、動作するまでにある程度の時間が必要です。また、初期温度である周囲温度が影響します。さらにPTCサーミスターは温度上昇を左右する熱抵抗(基板との実装状態、基板のパターンなど)により大きく影響を受けます。

これに対し、eFuse IC は内蔵するスイッチの両端の電圧をモニターし通過電流値を判断、スイッチ(MOSFET)をオフするので、動作までの時間はほとんどかかりません。周囲温度などの影響も少なく正確な電流値で遮断をすることができます。

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以下の資料にも関連する説明がありますので、ご参照ください。

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